多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と不妊

PCOSとは?

 

PCOSは、卵巣機能に異常をきたすものです。

 

人の卵巣では卵胞という卵子の素もとが成長し、正常であれば成熟した卵胞から卵子が毎月一個ずつ排出されます。

 

これが排卵です。通常卵胞は一つのみが完全に成熟し、それが破裂して、そこから卵細胞(卵子)が飛び出す形で排卵します。

 

しかし、多嚢胞性卵巣症候群の場合、卵巣内での卵胞の生育が上手くいかず、排卵がきちんと行われません。

 

PCOSでは多数の卵胞がいっぺんに大きくなり、未成熟のままその成長が止まってしまい、破裂しないために中の卵子が排出されません。

 

PCOSは超音波で卵巣を見ると、10mm前後の均等な大きさの卵胞が一列に数珠つなぎに見えることが多く、卵胞はこれ以上大きくなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

PCOSの原因とは?

 

原因のひとつとして最も重要なのは、インスリン抵抗性もしくはインスリンの血中濃度が高まること(糖分の摂り過ぎ)と肥満です。

 

特に幼少期の肥満が非常に影響を与えると言われています。この他には環境汚染、食品添加物などの化学物質、慢性的な炎症などがあります。

 

PCOSの原因であるインスリン抵抗性は、長期間に渡る糖分、主に砂糖のとりすぎが引き起こしますが、糖尿病、高血圧、心臓病、脳梗塞、ガン、腎臓病、非アルコール性肝脂肪または肝炎を引き起こしやすくなります。

 

また、同時に甲状腺機能低下症を引き起こしているケースがよく見られます。

 

PCOSは男性ホルモンが上昇するのが特徴で、男性ホルモン値は診断にも使用されます。

 

 

①糖質の多い食事で食後高血糖

(グルコーススパイク)

 

      ↓

 

血糖を下げるホルモン、インスリンの大量放出される

      ↓

 

②繰り返すうちに、インスリンが効かなくなる

(インスリン抵抗性)

 

      ↓

 

卵巣での「男性ホルモン」産生増加

 

      ↓

 

③卵胞の発育に異常が起こりPCOSになってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PCOSの症状とは?

 

・月経異常

 

ホルモンが正常に分泌されることで、女性の体には一定の周期で生理が訪れます。

 

しかし、ホルモンバランスが乱れることで、生理周期が39日以上になる「稀発月経」や、生理そのものが来ない「無月経」という状態になることがあります。

 

また、生理は来ているが排卵されていない「無排卵月経」になることもあります。

 

無排卵月経の場合、基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれないといった兆候があり、基礎体温がずっと低いままの状態が続くときは注意が必要です。

 

 

・男性化の徴候

 

男性ホルモンと呼ばれるアンドロゲンの産生量が増加することで、女性であるにも関わらず男性的な特徴が現れる場合もあります。

 

たとえば、口周りや腕、すねなどに毛が増えたり、にきびが増えたり、声が低くなったりする現象も見られることがあります。

 

 

・糖尿病

 

典型的なPCOSの症状を持つ女性のうち、40%が40歳までに耐糖能異常や糖尿病を発生することがわかっています。

 

また、年齢が高くなり、体重が増えるほど血糖コントロールが悪くなるので、体調管理に気をつける必要があります。

 

また、PCOSがある状態で妊娠した場合、妊娠糖尿病のリスクが高まるため、特に注意が必要です。

 

 

・心血管疾患

 

もともと肥満傾向にあると、PCOSになるリスクが高くなりますが、PCOSを発症するとさらに、お腹の脂肪が優先的に蓄積されていきます。

 

その結果、頸動脈や冠動脈などの血管疾患が増加します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PCOSの方を妊娠させる方法とは?

 

・クロミッドを飲む

 

一般的に排卵障害に対して行われる治療の第一歩は、クロミッドというお薬を飲むことが多いと思います。

 

しかし、PCOSの方は50%の確率でクロミッドの効果が無効になってしまいます。

 

 

・メトホルミンを併用する

 

糖尿病をもっている方やインスリン抵抗性がある場合には、インスリン抵抗性改善薬(メトホルミン)を併用することによって、排卵できる場合があります。

 

排卵誘発剤の副作用が多すぎるため、副作用の少ない治療方法として注目を浴びています。

 

 

・排卵誘発剤の注射

 

クロミッドの薬に対して抵抗性のある方はクロミッドを服用しても排卵が起こりません。

 

その場合は、排卵誘発剤(HMG製剤、あるはFSH製剤)の注射をすることが多いですです。

 

排卵誘発剤を注射すると、約90%の確率で排卵するといわれています。

 

 

・卵巣多孔術

 

腹腔鏡手術を行い、両側の卵巣に15か所ずつぐらい穴を開ける卵巣多孔術です。

 

術後に自然と排卵できる確率は約66.7%〜88.9%です。

 

レーザーメスや電気メスのような手術の種類によって、確率は変わってきますので詳細は医師の方に相談しましょう。

 

 

・人工授精の併用

 

より妊娠率を高めるために、クロミッドや排卵誘発剤の注射と共に、人工授精を併用する場合もあります。

 

 

・体外受精胚移植の治療

 

上記の治療を行っても排卵が起こらない、または妊娠しない場合は、体外受精胚移植の治療に進みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PCOSには糖質制限が効く?

 

PCOSの方は、一般的にインスリン抵抗性が高く、糖尿病との関連が指摘されています。

 

また、PCOSではない方と比べて、卵巣組織等へ沈着したAGEs(AGEsについては、以前の記事を参照してください。https://gottama.jimdo.com/2017/11/02/%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E3%81%A8%E7%B3%96%E8%B3%AA%E5%88%B6%E9%99%90/)が多いとされ、PCOSの方の卵子の質が悪いことが多い理由の一つとも考えられています。

 

そのため、インスリンの過剰分泌を正常化するという意味では、糖質制限食がベストの治療法だと思います。

 

出来るだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後の高血糖を防ぎましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

PCOSは、肥満や糖尿病とも関連しており、不妊だけの問題ではありません。

 

今は妊娠を希望していないという方でも、放置してはいけません。

 

長期的な治療や、経過観察が必要となるので、早めに婦人科を受診しましょう。