排卵障害と不妊

排卵障害とは?

 

 

排卵障害とは、排卵に関与するホルモンが正常に機能していないため、排卵させるまでの過程に異常がおき、卵が育たない、また、育ってもうまく排卵できないことをいいます。

 

例えば、排卵障害かどうかを見極める方法として、一つは基礎体温を見ることです。

 

まず最初に、脳の視床下部からGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌されます。

 

これが脳の下垂体に刺激を与え、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を分泌させます。

 

排卵前には卵胞刺激ホルモン(FSH)の影響で体温は下がります。

 

そして黄体化ホルモン(LH)が分泌され、排卵を境に体温は上昇し基礎体温は2相になります。

 

しかし、排卵障害がある場合は2相にはなりません。

 

つまり、視床下部や下垂体の異常でFSH、LHの分泌が不十分な場合、卵胞がうまく発育していかないということです。

 

排卵に関与するホルモンは他にもありますので、以下にまとめます。

 

 

 

 

 

 

 

排卵障害の種類と関わるホルモンとは?

 

 

●視床下部によるもの

 

下垂体のコントロールを行なっている視床下部のホルモン分泌異常により、下垂体に影響を与えてしまう。

 

→関係するホルモン:GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)

 

 

●下垂体によるもの

 

下垂体のホルモン分泌異常のこと。FSHやLHの分泌不全によって、卵子が育たない、卵巣からの排卵がうまくいかない状態。

 

→関係するホルモン:FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)

 

 

●卵巣によるもの

 

卵巣から分泌されるホルモンの異常のこと。エストロゲンは子宮頚管粘液の分泌、プロゲステロンは子宮内膜の肥厚に深く関わっています。

 

→関係するホルモン:エストロゲン、プロゲステロン

 

 

●高プロラクチン血症

 

妊娠していないにもかかわらず、何らかの理由でプロラクチンが過剰に分泌されてしまう疾患です。

 

プロラクチンの働きは月経や排卵を抑制する働きがあるので、排卵障害をひきおこします。

 

また、受精卵の着床障害をひきおこすこともあります。

 

→関係するホルモン:プロラクチン

 

 

●多のう胞性卵巣症候群

 

通常は赤ちゃんの卵が入っている卵胞は月に1つずつ成熟しますが、その卵胞が卵巣内にいくつもできてしまうことです。

 

卵胞はたくさんあってもその中身は嚢胞状に変化してしまい、1つ1つは成熟しにくくなっています。

 

多嚢胞性卵巣の9割の人に排卵障害があるといい、また排卵障害の人の20~40%が多嚢胞性卵巣症候群であると言われています。

 

無月経や不正出血、男性ホルモン過剰(にきび、多毛)、肥満などの症状が特徴的です。

 

→関係するホルモン:インシュリン

 

 

●甲状腺ホルモン異常

 

甲状腺刺激ホルモン過剰の状態になることによって、身体全体のホルモンバランスが崩れます。

 

規則正しい性関連ホルモンが異常をきたす事になり、月経不順や無月経になることがあります。

 

それらの結果、妊娠しにくい状態になるということです。

 

→関係するホルモン:甲状腺ホルモン 

 

 

 

 

 

 

 

排卵障害の治療法とは?

 

 

妊娠するには排卵は不可欠なステップです。

 

自然周期では排卵が生じない方や良好な卵子が排卵されないと予測される場合には、薬物で排卵を起こすことが必要です。

 

また、正常に排卵している方でも、少しでも妊娠率を向上させるために使用することもあります。

 

排卵誘発剤には黄体機能を高め基礎体温を安定させるなどの作用もあります。

 

排卵誘発剤による奇形の発生ということはありませんし、報告もありません。

 

排卵誘発剤には内服と注射があります。

 

排卵障害がある場合には、まず内服から始め、効果が現れない場合に、注射に変更します。

 

 

 

・クロミフェン療法

 

軽度の排卵障害のときに使われます。クロミフェンは自然周期に近い状態で、間接的に卵胞を発育させ排卵を誘発します。

 

また、高い排卵率を有し、副作用が比較的少ないのが特徴です。

 

ただし、子宮内膜の厚さに影響を及ぼすことや頸管粘液が減少するなどの副作用がありますので、超音波検診で子宮内膜に影響が認められたら、注射などを組み合わせるなど、他の排卵誘発を行います。

 

クロミフェンを用いて妊娠した場合には、通常の妊娠より流産率が少し高くなります。また、双子が生まれる確率は5%といわれています。

 

クロミフェンでは、通常1日1〜2錠を月経周期5日目より内服します。

 

しかし、無効な場合は3錠まで増量します。経腟超音波検査で、卵胞が成熟した時点でhCGを筋肉注射する、クロミフェン-hCG療法も有効です。

 

 

・HMG-HCG療法

 

 

クロミフェン療法で排卵に至らない場合に使用します。

 

HMGは卵の入った卵胞を育てる作用があります。

 

HMGは数種類あり、若干濃度が違います。

 

これらを使い分けることにより効率的な排卵誘発を行います。

 

HMGは通常、月経開始後3〜5日目頃より筋肉注射し、数回にわたり経腟超音波検査を行い、卵胞の大きさが約20~22mmになった時に、HCGの注射に切り替えて投与し、排卵を促します。

 

 

 

 

 

 

 

 

排卵誘発剤の副作用とは?

 

 

・OHSS(卵巣過剰刺激症候群)

 

OHSSとは、排卵誘発剤に伴い多数の卵胞が発育することにより、卵巣腫大、下腹部痛などの症状を呈する症候群のことです。

 

OHSSの発症頻度は約10%~20%です。場合によっては重症化して卵巣が腫れ、20cmぐらいになり腹水がたまることもあります。

 

ただし、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で排卵誘発により卵巣内にいくつもの卵胞が育っている場合はOHSSになりやすいので、その周期のHCG投与は中止になることが多いです。

 

 

 

・多胎

 

排卵誘発剤を使用すると、1回の生理周期で複数の卵子が排卵されることがあります。

 

自然妊娠・人工受精の場合には、排卵誘発剤を使用することで双子の出産確率が上昇します。

 

しかし、体外受精・検体受精の場合には、排卵誘発剤を使用したとしても双子の出産確率は上昇しません。

 

また、排卵誘発剤には多くの種類があり、効果が大きいものから小さいものまであるので、排卵誘発剤の種類によっても双子の出産確率は変化します。

 

 

 

・アレルギーの問題

 

HMG製剤は尿由来のホルモン剤です。

 

尿からホルモンを抽出することで、夾雑なタンパク質が含まれてしまい、アレルギー反応を起こしやすいと言われています。

 

注射時の強い痛み、注射した部位の発赤や腫れ、不定愁訴など起こすケースもよく見られます。

 

しかし、効き目の面でHMGの効果が勝ると考えられるケースも多く、この選択はその都度、カラダの状況を見て、医師が決定致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

排卵誘発剤は、質のよい卵胞を育て、排卵を促すものであり、妊娠率をアップしてくれます。

 

排卵障害が不妊の原因である場合は、排卵誘発剤による治療がもっとも有効です。

 

しかし、効果が高い治療ほど、副作用も大きくなります。

 

女性の卵巣や子宮の状態も考慮しながら、どのような薬を使うのか、医師と十分に相談し、納得した上で、治療を受けてください。