トランス脂肪酸

トランス脂肪酸とは?

 

油脂の主要構成成分である脂肪酸は炭素原子が鎖状につながった構造を持ちます。

 

炭素と炭素が2つの手で結び付いた二重結合を一つ以上有するものが不飽和脂肪酸と呼ばれます。

 

さらに、不飽和脂肪酸は、二重結合の炭素に結び付く水素の向きでシス型(水素が同じ向き)とトランス型(水素の結び付き方が互い違い)の2種類が存在します。

 

このうちトランス型二重結合を持つ脂肪酸のことをトランス脂肪酸と呼びます。

 

 

 

・天然のトランス脂肪酸(シス型)

 

天然のトランス脂肪酸は、牛や羊などの反芻動物の腸内で生成されるものです。

 

牛や羊の胃の中にいる微生物の働きによって生まれています。

 

そのため、牛や羊などの乳やそれを原料とした乳製品やお肉に含まれています。

 

 

 

・人工のトランス脂肪酸(トランス型)

 

人工のトランス脂肪酸は、植物脂などに水素原子を人工的に付加して加工、生成されたものです。

 

マーガリンやショートニングなどが一般的なトランス脂肪酸にあたります。

 

主に、マーガリンやお菓子、揚げ物、パンなどの食品やサラダ油、キャノーラ油などの植物油に含まれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健康への影響とは?

 

トランス脂肪酸を取り過ぎると、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えて、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ることが報告されています。

 

悪玉コレステロールが増えると、動脈硬化などによる虚血性心疾患のリスクを高める可能性があるのです。

 

世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%未満とするように勧めています。

 

農林水産省によると、日本人が食品からとっているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96gであると推定されています。

 

普段食事からとる脂質の量が多い場合にはトランス脂肪酸の摂取量も多くなることが報告されているため注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トランス脂肪酸を多く含む食品とは?

 

 

・マーガリン

 

 マーガリンはいろいろな食品の中でも圧倒的なトランス脂肪酸の保有量です。

 

バター派とマーガリン派では、一昔前はマーガリン派の方がヘルシーで健康的なイメージでしたが、今では完全に真逆です。

 

ちなみに、クッキーやビスケット、菓子パンなどにはマーガリンが使われています。

 

 

・ピーナッツバター

 

 ピーナッツバターは、トランス脂肪酸を多く含んでいます。そして、100gあたり600kcalもあります。

 

 

・マヨネーズ

 

 市販されているマヨネーズは、その半分以上が植物油なので、トランス脂肪酸の塊です。

 

自作でオリーブオイルからマヨネーズを作った場合は問題ありません。

 

 

・ショートニング

 

ショートニングは植物油由来の半固形の食用油脂です。形状や性質はマーガリンと同じようなものです。

 

用途は、お菓子や菓子パン作りに使われ「サクサク」や「しっとり」などの食感をだすためには欠かせないものです。

 

トランス脂肪酸の保有量は極めて高く、マーガリンを凌ぐ量です。

 

 

・コーヒーフレッシュ

 

コーヒーフレッシュは、ファミレスやコーヒーショップに置かれています。

 

コーヒーフレッシュには、牛乳や生クリームといった乳製品は入っていません。

 

簡単にいうと、水と油を混じりやすいようにするために乳化剤を加え、とろみをつけるために増粘多糖類を加え、色を調整するためにカラメル色素、日持ちをよくするためにph調整剤を加えただけのものです。

 

例えるならば、ミルク風トランス脂肪酸の塊です。

 

 

・ファストフードや惣菜の揚げ油

 

トランス脂肪酸に関しては、食材に原因があるのではなく「揚げる油」が原因となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トランス脂肪酸と不妊症との関係とは?

 

トランス脂肪酸が不妊症のリスクを高めることを、米国のハーバード大学医学部のウォルター・ウィレット ( Walter C Willett ) 氏らが、American Journal of Clinical Nutrition 誌 1 月号に発表しました。

 

研究者によると、

 

■総脂肪摂取量、コレステロール摂取量、トランス脂肪酸を除くほとんどの脂肪酸の摂取量は、排卵性の不妊症に関連しなかった。

 

■影響する要素で調整後に、炭水化物からのエネルギー摂取量と対照して、トランス脂肪酸からのエネルギー摂取量が、2%増加する毎に、排卵性の不妊症のリスクが、73%増加した。

 

■リノール酸やレバーなどに含まれるアラキドン酸など n-6多価不飽和脂肪からよりトランス脂肪酸からのエネルギー摂取量が、2%増加すると、排卵性の不妊症のリスクが、79%増加した。

 

■オリーブオイルなどに含まれるオレイン酸など一価不飽和脂肪酸からよりトランス脂肪酸からのエネルギー摂取量が、2%増加すると、排卵性の不妊症のリスクが 2.3 倍に増加した。

 

このように、トランス脂肪酸の摂取量が増加すると、排卵性の不妊症のリスクが増加するという結果が出ています。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

アメリカでは2018年6月までにトランス脂肪酸の全廃が確定していますが、日本では対策は取られていないのが現状です。

 

トランス脂肪酸は、完全に避けることは難しいと思います。

 

しかし、避けようとする意識があるだけでも、トランス脂肪酸の摂取量を減らせ、不妊のリスクを下げることができると思います。