ピロリ菌と不妊

 

ピロリ菌とは?

 

ピロリ菌は胃粘膜に生息しています。

 

胃粘膜は、強力な酸である胃酸に覆われているため、従来は、細菌も存在できないと考えられていました。

 

しかし、最近の研究により、胃の中でも存在できる、ピロリ菌という細菌がいることがわかりました。

 

ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を出して、自分の周りにアルカリ性のアンモニアを作り出すことで、胃酸を中和しながら、胃の中に存在しています。

 

ピロリ菌の感染経路は不明ですが、飲み水や食べ物を介して口から菌が入ってしまうことで感染するのではないかと考えられています。

 

さらに、免疫機能が十分ではない幼児期に感染する可能性が高く、免疫機能が確立している成人が新たに感染する可能性は低いようです。

 

日本人の場合、年齢が高い方ほどピロリ菌に感染している率が高く、60歳代以上の方の60%以上が感染しているといわれています。

 

また、ピロリ菌に感染しているだけでは、症状などは出ませんが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎の患者さんは、ピロリ菌に感染している方が多く、ピロリ菌が胃や十二指腸の炎症やがんの発生に関わっていると考えられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性がピロリ菌に感染した場合

 

ピロリ菌に感染した女性はピロリ菌に対抗する抗体を持ちますが、この抗体が卵子と精子の受精を阻害してしまいます。

 

精子が子宮頸管内にたどり着いても頸管粘液が精子の運動性を低下させるので、妊娠する確率は低下します。

 

妊娠した女性がピロリ菌に感染すると、赤ちゃんの命にも関わる妊娠高血圧性腎症の発症率が高くなります。

 

妊娠高血圧性腎症は胎児が危険に晒されるので、胎児死因にも挙げられます。

 

また、妊娠後の悪阻(つわり)が重症になるという報告もあるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

男性がピロリ菌に感染した場合

 

男性がピロリ菌に感染すると、精子の形成に影響を及ぼすとされています。

 

また、精子の奇形や、変質、運動率の低下や寿命が短くなるともいわれています。

 

男性不妊の方がピロリ菌の検査をすると保菌者が多く、除菌をすると精子の状態がよくなるというデータがあります。 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリ菌の保菌率は?

 

日本でのピロリ菌保菌率は、若い人に少なく、高齢者ほど感染率が高くなっています。

 

不妊治療世代である30代では15~20%の保菌率で、40代では20%、50代では50%以上と年齢が上がるに従い増加する傾向があるのです。

 

年齢が上がるほどピロリ菌の保菌率が高いのは、水からの感染源が考えられています。

 

つまり、水道水などのインフラがまだ整っていなかった時期に幼少期を過ごしたためではないかとされています。

 

ただし、ピロリ菌は人の胃の中に生育しているものです。

 

そのため、ピロリ菌を保有する人の胃から菌が上がり、直接子どもに感染するというリスクも考えられます。

 

胃炎がある方などピロリ菌感染の疑いがある方は、夫婦で調べてもらうことが大切です。

 

2012年よりピロリ菌に感染した胃炎に対する保険も適用されたため、従来の保険適用基準より幅広い人が治療を受けやすくなりました。

 

ピロリ菌に感染していることがわかったら、抗菌薬を使い除菌することができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

ピロリ菌と不妊症の直接的な因果関係はまだわかってない部分も多いようですが、ピロリ菌保菌者に妊娠しにくい人が多いことは判明しています。

 

原因不明の不妊の方は一度検査をしてみるのもいいのではないかと思います。

 

感染している方は除菌することで、妊娠しにくい状況のひとつを改善できると考えられるでしょう。