女性は隠れ貧血が多い?
鉄は主に食べ物から摂取するミネラルの1種で、体内の血液中のヘモグロビンを作る材料です。
血液中のヘモグロビンに含まれている鉄は、身体の各組織に酸素を運ぶなどの働きをします。
一方で、体内の鉄はヘモグロビンだけでなく、フェリチン(貯蔵鉄)としても存在します。
フェリチンはヘモグロビンを作るために必要な鉄が足りているときに、肝臓や脾臓などにタンパク質に覆われた状態の貯蔵鉄として蓄えられています。
例えば、女性が月経などで不足した時には、このフェリチンが使われ、まだ足りないときには血清中の鉄まで使用されてヘモグロビンを補充するといわれています。
最終的にヘモグロビンを作る鉄まで足りなくなった状態が貧血の状態です。
ヘモグロビンが足りていているが、フェリチンが足りない状態が隠れ貧血の状態です。
鉄は酸素を運ぶほかにも身体のさまざまな細胞を作り出すときに必要な栄養素です。
隠れ貧血になるとめまいや頭痛のほかに肌荒れや免疫力の低下による体調不良などの症状も起きるといわれてます。
また鉄は子宮内膜を作る材料になるため、鉄が欠乏していると子宮内を妊娠しやすい環境に整えることが難しくなり不妊の原因となる可能性があります。
女性の7割はフェリチン不足?
女性は生理により、毎月鉄分が失われます。
失われた鉄分が食事で補充されない状態が続くと、ヘモグロビン値は正常でも、フェリチンの値が低い状態になります。
厚生労働省の国民健康栄養調査では、20~49歳の女性の7割は、フェリチンが30 ng /mL未満のフェリチン不足という調査結果が報告されています。
貯蔵鉄であるフェリチンは、理想的には100~150ng/mlですが、最低でも50ng/mlは必要です。
元気な赤ちゃんを産むための、フェリチン値の理想は100です。
アメリカでは、フェリチン不足では着床不全や早産、流産のリスクを高めると考えられており、フェリチン値が40以下では妊娠してはいけないと言われています。
フェリチン不足で現れる不妊の症状とは?
・子宮内膜が厚くならない
・卵子の質が悪くなりすい
・着床しにくい
・なかなか排卵しない
・遺伝子の染色体に異常が起こりやすい
・卵胞卵子の成長が妨げられる
・無排卵になりやすい
・排卵日がはっきりしない
・低温期が長くなる
・低温期が短くなる
・高温期に体温が上がらない
鉄を多く含む食材とは?
食品に含まれる鉄には、肉や魚などの動物性食品に多く含まれるヘム鉄と野菜や穀類などに含まれる非ヘム鉄があります。
へム鉄はレバーや赤身の魚、非へム鉄は野菜、卵、などに含まれているのですが、このうち吸収率が高いのはへム鉄で、その割合はおよそ15~25%です。
これに対し、非へム鉄は1~5%程度しか吸収されません。
ヘム鉄は、従来の非ヘム鉄と比較して吸収率が10倍近くにもなるため、1日に必要な鉄分を効率的に摂取する場合、このヘム鉄を多く含む食材をしっかり摂取していくことが良いと思います。
ヘム鉄
・レバー
・カツオ
・マグロ
・イワシ
・カツオ
・煮干し
非ヘム鉄
・菜の花
・ほうれん草
・小松菜
・あさり
・ひじき
・大豆
・卵
鉄の吸収を促す要素
・動物性たんぱく質
良質なたんぱく質は、鉄と結びつくことで腸からの吸収を促進します。
たんぱく質は、血液中の赤血球の材料にもなります。
・ビタミンC
鉄は主に十二指腸から吸収されますが、十二指腸は腸液の影響で弱アルカリ性となっています。
鉄は、電荷の状態によって二価鉄と三価鉄が存在しますが、アルカリ性で溶けやすいのは二価鉄です。
食品に含まれる鉄は一般的に三価鉄なので、ビタミンCが一緒に存在すると、還元作用を受けて二価鉄となり、吸収されやすい状態になると考えられます。
・クエン酸などの果実酸
クエン酸やリンゴ酸に代表される果実酸には、ミネラルを包み込んで吸収しやすい状態へと変化させるキレート作用という働きがあるため一緒にとると効果的です。
果実酸は果物や野菜、穀物などに多く含まれます。
※濃い緑茶やコーヒーは、渋み成分のタンニンが鉄分と結合して吸収を妨げるため、控えるようにしましょう。
まとめ
一般的な健康診断では、ヘモグロビン量などの測定を行うので、ほとんどの方が正常値になるといわれています。
フェリチンは、妊娠するための基本的な身体作りに大きく関わりますので、不妊の症状がある方は是非フェリチンの値を検査してもらうことをお勧めします。