子宮筋腫とは?
子宮筋腫とは、子宮筋層にできるこぶのような良性の腫瘍のことで、5人に1人の女性にあるといわれています。
腫瘍というと悪性腫瘍(がん)を想像しがちですが、それとは異なるものです。
子宮の壁は、一番外側が漿膜、次に筋層、内側が粘膜(内膜)でできています。
子宮筋腫は、この三層のどこにできるか、どの方向に発育するかによって症状が違ってきます。
いろいろな種類、大きさの筋腫が複数個できることが多く、筋腫が大きくなるにつれて子宮が巨大化します。
子宮筋腫の種類とは?
子宮筋腫は、筋腫がどの方向に育っていくかで3種類に分けられます。
その種類によって、症状の現れ方にも違いがあります。
最も多いのが、子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていく「筋層内筋腫」、次が子宮の外側に向かって成長する「漿膜下子宮筋腫」、そして数は少ないのですが症状が一番強く現れやすいのが子宮の内側に向かって発育していく「粘膜下子宮筋腫」です。
・筋層内子宮筋腫
子宮の筋肉の中にできる子宮筋腫で、生理の際の出血量が増えたり、出血が止まりにくくなるため貧血になったり、また生理痛が強くなったりします。
粘膜下子宮筋腫と比べると筋層内子宮筋腫ではある程度大きくならないと症状としてわからない場合も多いですが、赤ちゃんができにくくなったり、流産や早産になりやすくなる可能性や、またお産の際に赤ちゃんが下の方に上手くおりて来られなかったり、お産後の出血が多くなったりする可能性があります。
・漿膜下子宮筋腫
子宮の外側に飛び出てくる子宮筋腫で、最も自覚症状の少ない筋腫です。
大きくなってくることで、お腹の腫瘤感、頻尿、便秘が生じることがあります。
また、筋腫がねじれることで、急な強い腹痛があったりする場合もあります。
お産の際の出血が多くなる可能性もあります。
・粘膜下子宮筋腫
子宮の内側に飛び出してくる子宮筋腫で、極小さな腫瘤であっても、生理の際の出血量が増えたり、出血が止まりにくくなるため、結果として慢性鉄欠乏貧血になり立ち眩みや、心臓に負担がかかり過ぎて、息切れ、動悸、疲れやすくなるなどの症状が出ることがあります。
また生理痛が強くなったりします。
また、赤ちゃんができにくくなったり、流産や早産になりやすくなります。
子宮筋腫と不妊との関係とは?
子宮筋腫があっても自然妊娠・出産はできます。
しかし、子宮筋腫の大きさや発生場所によって、不妊の原因になる可能性があります。
例えば、子宮筋腫によって子宮が変形し、内膜がデコボコになることで、子宮内膜の状態が悪くなり、着床しづらくなることがあります。
また、子宮筋腫が卵管付近にできた場合、受精卵や精子の移動を妨げることで、自然妊娠を困難にする恐れがあったりします。
子宮筋腫の治療法とは?
治療には、保存的な治療と外科的な治療があります。
保存的な治療は、漢方薬とホルモン療法です。
これらは一時的に症状を緩和するもので根本治療とはなりません。
外科的な治療には、子宮筋腫だけを取る筋腫核出術、子宮を取る子宮全摘術、UAE(子宮動脈塞栓術)、集束超音波治療(FUS)があります。
・筋腫核出術
不妊症や今後お子さんを望む場合に行います。子宮に出来た筋腫のみを取り除きます。
おなかを開けて筋腫を取り除く開腹手術やおなかは開けない腹腔鏡下手術があります。
開腹手術のメリットとしては、術中に直接子宮に触れるためMRIで見えないような小さな子宮筋腫も核出可能なこと、妊娠・出産時に信頼できる強度の子宮層瘢痕形成(子宮の壁の傷跡)が行えます。
デメリットとしては手術創が大きく、入院期間が長くなり、おなかに手術創瘢痕が残ってしまうことが挙げられます。
腹腔鏡手術は手術創が小さく手術の回復が早いこと、傷が目立たないことがメリットとして挙げられますが、筋腫の出来ている場所や大きさによっては出来ない場合があります。
また、術後妊娠中の子宮破裂の報告も散見されており手術には熟練を要します。
いずれの場合も、子宮筋腫のサイズが大きい場合には筋腫核の縮小と子宮体部の血流を減少させるために手術前に偽閉経療法(ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRHa)により、エストロゲンを低下させ閉経期と同じようなホルモン状態にすること)を行うことがあります。
・子宮全摘術
子宮筋腫が大きい場合、これ以上お子さんを望まない場合、悪性の疑いがある場合には子宮を全摘出します。
開腹手術になるため、傷がある程度大きく通常の生活に戻るまで3週間~1か月ほどかかります。
子宮が完全に摘出されるため、術後に子宮がん検診を受ける必要がなくなります。
・UAE(子宮動脈塞栓術)
血管造影の手技を応用して、局所麻酔で皮膚に入れた小さな切開から、カテーテルを選択的に子宮動脈内に挿入して、血管が閉塞するような物質(塞栓物質)を注入し血流遮断をする治療法です。
約80~90%の患者さんで、子宮筋腫による過多月経、不正出血、疼痛などの症状が改善し、子宮筋腫も平均で約半分以下に縮小していきます。
また、この治療により縮小した子宮筋腫は、ホルモン療法による筋腫縮小と異なり、再び大きくなることはないと報告されています。
ただし、合併症として手技自体による仮性動脈瘤の形成や出血の他に、子宮筋腫を塞栓した事による筋腫の脱落・分娩時の痛みや帯下の異常、感染症、深部動脈血栓症またそれに伴う肺動脈塞栓症、卵巣機能不全などが挙げられます。
将来分娩・妊娠を希望する場合には原則適応外ですが、子宮全摘出術しか治療法が残されていない場合のみ行うことがあります。
治療後の妊娠・出産例については複数報告されており、59.5%が妊娠しており、流産が10.3%という報告もあります。
・集束超音波治療(FUS)
集束超音波治療(FUS)は多数の強力な超音波を腫瘍内で集中させ、焦点領域を60~90℃に加熱し組織を加熱凝固、壊死させる治療法です。
もともとは前立腺疾患治療に臨床応用されたもので20年ほど経過しています。
腫瘍の発生部位やその性状、大きさなどの観察のほか焼灼部位での温度変化もリアルタイムに見られるので、MRI検査とFUSを統合させて治療を行います。
治療を行うと筋腫は壊死しますが筋腫自体はなくならず、治療して12か月で約40%縮小すると報告があります。
妊娠・分娩に対する安全性は確立させていないため、妊娠を考える場合には治療適応外となり、影響は分かっていません。
まとめ
体外受精を行う際、事前の検査結果で、子宮筋腫が不妊の原因になっているようであれば、体外受精よりも先に子宮筋腫の手術を行うのが一般的です。
しかし、子宮筋腫が不妊の原因だと断言できないような曖昧な状態の場合は、子宮筋腫の手術と体外受精のどちらを優先するかは、判断が難しいものです。
女性の年齢やその他の子宮系疾患の有無などを考慮して、主治医と相談しながら決めることをおすすめします。