エンブリオ・グルー(受精卵接着剤)

エンブリオ・グルーとは?

エンブリオ・グルーは高濃度のヒアルロン酸が入っている培養液です。

ヒアルロン酸は美容関連でよく耳にしますよね。ヒアルロン酸を注入してシワを取る、関節に注射して痛みをよくする、お肌の保湿などに使われています。

ヒアルロン酸は卵管や子宮の中にもあって、着床する時に増えることがわかっています。

ヒアルロン酸は受精卵の移動や子宮内膜への接着を助けていると考えられます。

胚移植をする前に、受精卵を10~30分の間、エンブリオ・グルーにつけておくことで、受精卵が着床しやすくなるのを期待します。

エンブリオ・グルーを使っている病院はそれほど多くないですが、エンブリオ・グルーを使う時の費用は、5,000~20,000円くらいのようです。








妊娠率はどれくらいアップするのか?

エンブリオ・グルーの製造元であるVitrolife社の発表した臨床上の成功率は、

・受精卵の着床率を34%上げる

・妊娠継続(流産せずに出産に至ること)の確率を24%上げる


といわれています。

また、なんばIVFクリニックの発表では、

EmbryoGlue群の平均年齢は35.9歳、平均子宮内膜厚10.6mm、通常の培養液群の平均年齢36.3歳、平均子宮内膜厚10.7mmであり、両群間に年齢、子宮内膜厚ともに差はなかった。

着床率について比較するとEmbryoGlue群では60.0%、通常の培養液群では36.1%(P<0.05)となり、EmbryoGlue群で有意に着床率が上昇した。

またこのうち35歳未満では2群間の着床率に差は認められなかったが、35歳以上においては通常の培養液群では32.6%、EmbryoGlue群で63.6%(P<0.05)となり、EmbryoGlue群で有意に着床率が増加した。

ヒアルロナンリッチなEmbryoGlueを胚移植培地として用いる事により着床率が有意に増加した。

さらにこのうち、35歳以上の症例において顕著な着床率の増加が見られた。

これらの事から、EmbryoGlueは高年齢の症例に対して特に有効である事が考えられた。


*参考文献:日本生殖医学会2010年55巻より


とのことで、妊娠における着床障害の改善に良い結果をもたらしているようです。








エンブリオ・グルーの安全性は?

エンブリオ・グルーは、FDA(米国食品医薬品局)に認可されており、胚や人体に悪影響がないことが確認されています。

しかし、エンブリオ・グルーが使われるようになったのは最近なので、臨床データも少ないという欠点があります。

その結果、日本では正式に有効性が認められていません。

ただ、もともとヒアルロン酸は子宮内膜にも自然に存在しているものです。

ヒアルロン酸は卵胞液、子宮内膜にも元から存在している成分です。

この粘液性があるエンブリオ・グルーを受精卵を子宮に戻す際に使用することで、子宮内膜への接着効果や物理的外圧から守られるという効果が期待できます。

エンブリオグルーはもともと体内にある成分なので、副作用は起こりにくいと言われています。

しかし、着床率は上がるようなのですが、妊娠継続率に関しては従来とあまり変わらないとの報告もあり現時点では意見の分かれるところです。







まとめ

複数回の移植失敗である場合は、前向きな選択肢の一つであると思います。

病院に通院されている方は、まず主治医に相談してみて下さい。