不妊治療の前にやっておきたいこと

感染症の検査

・風疹(ふうしん)

妊娠初期に風疹にかかると、赤ちゃんの脳や心臓に奇形が生じたり、白内障や緑内障といった眼の症状や感音性難聴などの「先天性風疹症候群」という病気になる可能性が高いと言われています。

妊娠前に抗体検査を受けて、風疹抗体があるかないかのチェックをしましょう。

予防接種の時期変更の影響で1979年から1987年生まれの場合、風疹の予防接種が未受診なことが多いので特に注意が必要です。

自治体によっては、妊娠していない成人女性を対象に風疹の抗体検査をおこなっている保健所もあるので、予防接種したかどうかわからない方は、お住まいの役所に問い合わせしてみると良いと思います。



・水痘(すいとう)


水痘とは水ぼうそうのことです。

水痘の予防接種は妊娠中に受けられません。

日本人は成人の95%は抗体を持っているので、全員検査の必要はありませんが、水ぼうそうにかかったことのない人は抗体がないので妊娠を希望する前に予防接種をすることを奨めます。

妊娠初期(妊娠20週以前)に水痘に感染すると1~2%の割合で「先天性水痘症候群」(低出生体重、皮膚瘢痕、四肢低形成、脳皮質萎縮、目の脈絡網膜炎など)になるおそれがあります。

また、分娩の前1週間以内に妊婦さんが水痘の症状が出た場合、赤ちゃんに感染し重症化することもあります。




・B型肝炎

B型肝炎に感染している妊婦は、妊娠中や出産中に新生児にウイルスを感染させてしまうおそれがあります。

妊婦がB型肝炎に感染していることを医師が事前に知っていたならば、医師は新生児が感染しないように分娩室で適切な処置を行うことができます。

適切な処置が行われないと、新生児が慢性B型肝炎を発症する確率は95%といわれています。

B型肝炎ウイルスは血液を介して感染するほか、性交渉でも感染します。

パートナーがB型肝炎だという人は検査を受けておきましょう。



・トキソプラズマ

仔ネコの便や生肉の中に存在するトキソプラズマの経口感染で起こる感染症です。

妊娠中に初めてトキソプラズマに母親が感染する結果起こります。妊娠末期ほど胎児への感染率は上がりますが、妊娠初期の感染ほど重症化しやすいとされています。

妊娠中の初感染では胎児に感染し「先天性トキソプラズマ症」(水頭症、脈絡網膜炎など)を発症することがあります。

妊娠前に感染が確認されていれば、妊娠中の胎児への感染の心配はないとされています。

トキソプラズマ抗体検査は、標準的な妊婦健診の検査項目ではありませんが、希望すれば多くの医療機関で受けることができるので、主治医の先生に相談しましょう。

予防策は、猫の大便処理後はよく手を洗うこと、生肉を食べないこと、ガーデニングで土を触るときは必ず手袋をすること、野菜や果物はよく洗ってから食べるなどです。








がん検診


・乳がん検診

20~30代の若年の方もかかる可能性があり、妊娠中の人が罹患している場合もあります。

妊娠中から産褥期(授乳期)は乳腺が発達していて、乳房が張って痛みを伴い、乳房腫瘤(しこり)を見つけにくくなります。

そして、気づいた時にはがんが進行してしまっている場合があるので、妊娠中の方は注意が必要です。



・子宮がん検診

子宮頸がんにかかる20~30代の若い人が増えています。

子宮頸がんの初期は無症状です。

子宮頸がん検診としてまず実施されるのは、子宮頸部細胞診です。

これはヘラ・綿棒などで子宮頸部の表面をこすりとって調べるものです。

子宮頸がんは、発見が遅れると子宮を失うだけでなく、命の危険もあるがんです。

しかし、早期発見・早期治療が可能ながんのため、もし発症しても、検診等で早期に発見できれば、子宮を温存して治療し、その後の妊娠・出産も可能です。  







甲状腺の検査

甲状腺は前頚部で、喉仏のすぐ下にあり、重さが約20g、大きさが約4cmの臓器です。

妊娠すると、甲状腺ホルモンの分泌量が一時的に変化します。

これは妊娠初期に胎盤から産生されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が、甲状腺刺激作用を持つためです。

また、妊娠に伴い「甲状腺機能亢進症」や「甲状腺機能低下症」といった甲状腺疾患が合併することもあります。

血中の甲状腺ホルモン値が高いほど流産する率が高く、甲状腺ホルモン値が低いと不妊や胎児の発育に影響するといわれています。

甲状腺機能は血液検査で調べられるため、病院によっては妊娠初期の血液検査の項目に含まれているようです。







歯の治療


妊娠中は、女性ホルモンの影響で、唾液の量が減ったり、歯周病菌のエサが増えたり、つわりで歯磨きができないなどが理由で虫歯になりやすくなります。

妊娠中(安定期)も歯の治療は行えますが、おなかが大きくなることであお向けでの治療が難しくなったり、使える麻酔やはれ止めなどの種類が限られてしまうので、妊娠前に済ませておくのがおすすめです。

出産後は赤ちゃんのお世話でなかなか歯科へ行けず、いつの間にか虫歯を悪化させてしまうこともありますので、治せるものは早めにケアしておきましょう。






体重の管理

妊娠中に体重増加に制限が設けられています。

それは、出産の際のリスクを減らすためです。

肥満体型の方は、出産の際のリスクが上がります。

肥満の方の場合、赤ちゃんが出てくる産道に脂肪がついてしまうことから難産になる可能性が高く、また陣痛も微弱になり長引く傾向にあります。

赤ちゃんの児頭回旋異常も起こりやすく、標準的な体型の妊婦さんに比べると総じて出産のリスクは高いといえます。

また、重度の肥満の方の場合、出産を受けいれてくれる病院が限定されるというデメリットもあります。

妊娠前から体重の管理はしっかり行っておきましょう。







まとめ

上記の内容はすべて母体と赤ちゃんの健康や安全のために必要なことであると思います。

自分の身体に気をつけることは、赤ちゃんだけではなく、自分のためにもなります。

事前に知って心構えをしておきましょう。