子宮内膜症とは?
子宮内膜は子宮の内側にしかないはずの細胞ですが、この子宮内膜にとてもよく似た細胞が、なぜか身体のさまざまな場所に勝手に発生し、そこで活動してしまうのが子宮内膜症です。
初経後、10代後半から発生する可能性があり、今のところ閉経するまで完治しません。
普通は起こらない出血がお腹の中で起こるため、体の防御反応として癒着が起こります。
子宮内膜症は骨盤内の慢性的炎症です。
骨盤内に慢性的に炎症がおこると骨盤内に水が貯まります。
この腹水中には免疫担当細胞が増加したり、炎症物質サイトカインが増加したりしています。
その結果、卵胞の発育が障害され、卵の質が低下し、受精率、妊娠率が低下します。
さらには卵巣内に発育した子宮内膜症(チョコレートのう腫)は卵巣機能を低下させます。
このようなことが不妊原因と考えられています。
子宮内膜症による癒着とは?
別々の組織がくっつくことを癒着と言います。
また、別の言い方をすると、傷ついた組織が直ることを意味します。
お腹の中では色々な臓器の表面は、腹膜という皮膚で覆われているため、それぞれの臓器が接触していたり、重なり合ったりしていても癒着は起こりません。
しかし、腹膜が傷つく状態(子宮内膜症、クラミジア感染、手術後など)になるとその傷が治っていく過程で周囲の組織間に癒着が起こります。
この癒着は卵管と卵巣の位置関係を変化させたり、卵管を動きにくくしたりして卵管が排卵した卵を取り込むことを妨害します。
子宮内膜症がもっとも多く起こるのは卵巣ですが、腹膜、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を支える靭帯)、膀胱子宮窩(膀胱と子宮の間のくぼみ)にもよくみられます。
発生する部位により、臨床症状は異なり、ダグラス窩に発生する場合には、月経時の疼痛に加え、月経時の腸管蠕動が亢進することによって下痢気味になることもあります。
また、性交時の疼痛が強くなることを訴える場合も少なくありません。
検査・診断方法とは?
超音波検査で、卵巣に内膜症の特徴などがみられるかどうかを確認します。
病気による変化が卵巣に起こっていれば、MRI検査を行うことがあります。
MRI検査は、腹膜や腸の表面など、他の部位に対して実施することもあります。
これらの検査でみつかった特徴が子宮内膜症に合致すれば、臨床子宮内膜症と診断されます。
超音波検査やMRI検査をしても原因不明の場合や、確定診断をつけたい場合には、腹腔鏡検査が行われることがあります。
腹腔鏡検査とは、腹腔鏡を用いてお腹のなかを調べる検査方法です。
腹腔鏡検査の実施中に、病気による変化がみられれば、その部分を切除したり病組織を焼いたりして治療する場合があります。
また、卵巣がんの状態をみるために使われることが一般的な腫瘍マーカー(CA125)の値が診断材料となることもあります。
不妊に対する治療法とは?
腹腔鏡下手術によって病巣を取り除くことによって、術後の妊娠率が上昇します。
したがって腹腔鏡下手術が第一選択となります。
これはお腹に穴を空けて、そこから差し込んだ鉗子と呼ばれる棒の先で手術をするものです。
腹腔鏡下手術のみにより30%の方が妊娠しています。
これに対して、薬物療法は子宮内膜症の病巣を小さくし、痛みを和らげる効果がありますが、残念ながら妊娠率を改善することはほとんどありません。
体外受精も有力な治療法です。
しかし、子宮内膜症の存在によって妊娠率が低下します。
体外受精周期の前にGnRHアゴニスト製剤で3~6か月の治療をすることによって、妊娠率が上昇します。
また、卵巣チョコレート嚢胞の場合、腹腔鏡下に嚢胞摘出術(病巣だけを取り除く手術)を行った後に、GnRHアゴニスト製剤を行い、体外受精を行う方法が妊娠率が最も高いようです。
まとめ
子宮内膜症は生理が順調にくる、いわば女性にとってもっとも充実した時期におこります。
「腰痛」「性交痛」「排便痛」などがずっと続くようでしたら、早めに医療機関を受診してください。